★エンジンチューニング
誰もが、
もっとパワーを手に入れるたい為、いろいろなチューンを行います。
エンジンチューンは、チューンの結果が
ダイレクトに体感
できて、最も魅力的なものです。
ただ
エンジン工学
は明確なものですから、エンジンチューンを行う前には工学的な検討が必要です。
実は、既に
レシプロエンジン(4サイクルエンジン)の基礎工学は充分に
完成
されており、エンジンチューニングも理論的に明らかなことばかりです。つまり、新しい技術、新しい発見は無いとも言えます。
ちょっと淋しいですが、逆に言うと、エンジンチューニングは必ず
公式どおりの結果
が出る、もし結果が出ない場合はチューニング手法に間違いがあることになります。
チューニングを極めるには、まず基礎工学、公式などに目を通すことが先決です。
間違っても
雑誌の記事やうわさ話、サイトでの効果ありの
評価をそのまま信じたりはしないで下さい。
大手の雑誌の特集記事には結構な
間違いがあります。
なぜなら雑誌記者は編集の専門家ではあっても、チューニングの専門家ではないから、必ず記事のソースになるショップやパーツの製造メーカーのうたい文句や煽りの影響を透けています。
またそれら記事の評価は大方はテストライダー等の感覚的なモノに頼っていて、科学的な評価を行う手法をとっていない場合がほとんどです。
例えば、あるパーツを付ける前と付けた後のベンチテスターでのパワーグラフなどが掲載されていますが、数%のアップ率なんて殆ど測定誤差なのに、グラフの通りにアップしたなんて記事を信じてはパーツメーカーのいいカモになってしまいます。
それどころか、グラフでは向上していないが、感覚的にはスムーズになったとか、果てには、装着して数週間後にスムーズになってなんていう感覚的な評価は、記者としての姿勢や公平性に問題があるとしか思えません。
ちゃんと裏を取るように再度パワー測定をするなり、記事の正当性を検証しないというのでは、全面広告の雑誌だとしか思えません。
★パワーは公式どおりに出る
二輪車、四輪車のエンジンは日本メーカーが力を付けた'60年代から現在までに発展、進化して
高性能、高機能化
してきました。ほぼ40年の進化の歩みは日本という国の発展と同じく、めざましいものがあります。
ただ、エンジンの出せる最大パワーに関しては、実は
進化していません
。
'60年代のエンジンでも現在のエンジンでも最大パワーの数値は実質的に変わっていません。
その実例を次に示します。
・
1970登場のカローラは、排気量1400ccで、最大パワー
86PS/6000rpmです。
・
2000登場のカローラは、排気量1500ccで、最大パワー110PS/6000rpmです。
30年間
の技術の進化で同一排気量に換算して
約1.2倍のパワーが出るようになったとも言えますが、その原因はキャブレターが
燃料噴射になって、インテークマニホールド内径に絞りが無くなり、同時にインテークマニホールドの形状や熱伝達率が改善され1.1倍ほど混合気を多く
シリンダに充填出来るようになったことと、バルブが2バルブから
4バルブになり、理想的な
ペントルーフ形状の燃焼室になり、燃焼室の中央に点火プラグが配置出来るようになったこと、それにより
圧縮比を上げても大丈夫になったこと、加えて、点火装置が
トランジスタ式の高エネルギ型になって高負荷時の燃焼状況が向上したことによる1.1倍のトルクアップです。
実際にはガソリンの質の向上による影響もあります。
ここでパワーアップに貢献した進化の殆どは
'60年代始めには完成していた技術であり、
'70カローラに搭載されていなかったのは当時の技術と製造コストの事情によるものです。
つまり基本的な技術
的に関しては進化はしていません。
結局、
4サイクルのエンジンに関しては'60年初めまでに殆どの
理論が完成の域に達しています。
つまりエンジンのパワーは
理論式どおり、
公式どおりに出ます。
完成した基本理論以外で
現在までに進化した
と言えることは、スーパーチャージャ、加給に関することと新素材、新材質、新表面処理、バルブタイミング等の可変制御、マイコン制御等の
製造上の技術、および
制御上の技術です。
また、
2サイクルのエンジンに関しては現在も未完成で、もしかするとこれからの進化がありえます。ダイハツ等のショーモデルを見ても2サイクルの発展の可能性を感じます。
完成した理論から言える単純なエンジンパワーの
公式は、
エンジンのトルクーは、
排気量に比例する
ということです。
燃料を混合気にして、圧縮後に点火、爆発するという
4サイクルエンジンのメカニズムは単純に表すと、
トルク =
排気量
という公式に落ち着きます。
ピークのパワーが欲しいと思えば、チューニングパーツを取り付けることよりも、単純に
排気量を増すことが最短コースです。
アメリカでのチューニング
というのは第一に排気量を上げることだと認識されている様です。
アメリカらしい、ちょっと単純な思考に見えますが、実は
核心を突いています。
排気量の制限があるレースなどでは、違うチューニング手法が必要ですが、制限が無いならば、まず第一に排気量を上げることがチューニングのファーストステップです。
実際、50ccの単車はどうやってもトルクは50ccのままです。
チューニングでエンジン回転数を上げてパワーを稼いで、2サイクルエンジンならチューンドサイレンサーである回転数範囲での充填効率を上げてトルクを稼いだとしも、やっぱり、125ccのトルクには届きません。
また、400ccの
単気筒エンジンはせいぜい30PSのパワー(SR400の様なあまりにも旧式なメカは、ここの例から外します。
)で、同じ400ccの
マルチエンジンの60PSに比べて倍半分と非力なチープなモノに見えますが、トルクは3.3kg-mと3.5kg-mと
大差はありません。
実際に走りも100km/hr以下の法定速度の範囲では
大差はありません。
トルク=排気量の公式
。
単気筒のトルク値がマルチに比較して劣るのは、マルチが集合管式のエクゾーストシステムを持ち、排気効率をかなり向上することが出来ることや、単気筒は吸気や排気の脈動が大きく、騒音値を押さえる為に抵抗の大きなエアクリーナーやマフラーを使うことによる差が出ています。
同一排気量の単気筒とマルチの対決では、むしろギアリングの差で非力な30PSエンジンの方が有利に加速が出来る条件が多いということも
理論的にあります。
その詳細は高度なチューニングのコーナーで説明します。
なお、
エンジンのパワーは最高速度に影響
が大きくあり、
エンジンの
トルクは加速力に影響
が大きくあります。
つまり、400ccの
単気筒エンジンはせいぜい30PSのパワーですが、ほぼ同一のトルクである、400cc
マルチエンジンと同等の加速性能が期待出来ます。(もちろんパワーによる最高速度の影響を受けない速度域の話です。)
単車
で心地良い
加速を楽しみたいならば、まずはエンジンの
トルクをアップさせるべきで、排気量のアップはチューニングのファーストステップとして考えて下さい。
排気量
=トルク = 加速
です。